W課長
2003年12月10日人生にオチは要らない
というよりも
初めからそんなものは無いんだそうだ
オチというものはそもそも
落語家がよかれと思ってやっちまった
ありえないお節介でしかない
そうなのか
ああつまらん
おれが。
和久井課長
あなたがどう思おうと
そんなことは知ったことじゃあない
微妙に知りたくなくもないが
和久井課長
お茶の葉変えておきましたよ
ひねって返さんかい
どうもありがとう
ひねり過ぎだそれは
和久井課長
どうしてそうも喧嘩を売るんだ
スカート丈が短いですよ
和久井課長
よええ奴ほど吠えたがる。
年上だろうと強い弱いは関係ない
和久井課長
コンビニ弁当毎日なのは
勝手でしょう
このおにぎり屋。
ああそうそれは
あなたが握ったんですかそれを
和久井課長
被害妄想だときさま
喧嘩を売っているのかきさま
和久井課長
髪の毛切ったんですか
じぶんで切ったのすごいじゃん
和久井課長
君ちょっといいかね
君の話は毎回ちっとも
全くオチとらんではないか。
普通にだらだらだらだらだらだら
垂れ流したいだけ垂れ流して
それじゃ
まるで
和久井課長
あなたはまるで人間のようだ
和久井課長
聖夜の僕ら
2003年12月9日暗い夜道で役に立つほど
発光する鼻を持つ君は凄い
と
褒め殺した彼も彼だが
疑いもせず
涙を流してまで喜ぶ僕も僕であった
物心ついて
僕が卑屈に鼻を鳴らして
以来
彼は何も言わなくなった
鈴の音だけが
静かに鳴り響く夜空
人々の幸せを運びながら
彼も
僕も
さして人々の幸せを願うわけでもなく
毎年淡々と仕事をこなしている
はじめの頃に確かに持っていた
ある種の使命感は
いつかどこかへと消えてしまった
馬鹿げたこと だなんて思ってやしないさ
思ったとしても
決して口に出したりはしないさ
未だに人を信じている
純粋な心を持った物欲まみれの子供宛てに
アバレンジャーの超合金
セーラームーンの変身セット
関係は無いが
包装紙は翌日即行で破るのかい?
穢れない心を持ち続けた御褒美に
心尽くしの一箱を
きみに
形が欲しくて
2003年12月8日白く淀みない
真冬の白壁に
真夏の影が落ちる
真夏に落ちた
人の影の輪郭は
髪の先まで精緻
それまで
じっと物書きに耽る姿でさえ
捉えられなかった
生きているという振動が
それを許さなくて
この世界で
命を持つものの輪郭は
余りに曖昧
形が欲しいのなら
ただ命を絶てば良かった
潰えた命だけが
明確な輪郭を残して
ねえ
きみが
そんなにも恐れた
世間体
とやらを気にする大人は
きみの
大事なひと だったのかな
曖昧でいいよ
曖昧でよかった
ヨクワカラナイきみで
構わなかったのに
白く淀みない
真冬の白壁に
いまはなき真夏の影が落ちる
眠れない夜のあとに
2003年12月7日朝日に明るく白んだ車内で
人々
目を閉じ 同じに揺れて
半拍ずれた中吊り広告
うつむき加減で
がたんごとんと
ゆらりゆられて
ねんねんころりよ
色とりどりの服を着て
短い髪や長い髪
ゆらりゆられて
ねんねんころりよ
朝日に明るく白んだ車内で
隣り合わせにゆらりゆられて
悩みごとも
いまや 朧
ゆらりゆられて
いまだけはここに
穏やかな眠りを
牛のいた風景
2003年12月5日路上を進む
箱詰めのわたし達は
天井を覆う布の暗さ
肩がぶつかる場の狭さ
揺れる足場を気にしながら
初めてみる外の流れる風景に
胸躍らせて ないた
もう故郷の小屋の鉄の柵や
そこから見える
見飽きた木々や鳥の風景
風になびく草原
それら全てとお別れなのだと
胸躍らせて ないた
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