渡り鳥
2003年12月23日南国の大空を行く渡り鳥
その群れの中で羽ばたく力を失い
下には海原が広がっている
海原だけが広がっている
伸ばしたまま硬直した翼は
これまでと変わらない風を受けながら
緩やかに高度を落としていく
思い出すのは
いつか幸せだった日々のこと
堕ちるという概念を
意識もしなかった
泥の中で我先にと口を開けて
母親を待ったあの日々のこと
羽ばたく力を失い
伸ばしたまま硬直した翼は風を受け
緩やかに高度を落としていく
かつて泥の巣の中で
幼い寝息を立て始めた
そんなときにも
こうして堕ちていった者達がいた
すこし先を飛ぶ彼等の幻影を見る
悲しいかね
それとも心穏やかかね
どちらでもいい
さあ
何もかもが終わる、
言い残すことが
あるかね?
彼等の軌跡を緩やかに辿っていく
これまでと変わらない風が頬を撫でる
無言のまま緩やかに落ちる高度
緩やかに、
音もなく落ちる高度。
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