子ども
2003年12月15日未だ会ったことのないプログラマーと
待ち合わせをしていたので
セルフサービスの喫茶店に入る
少し高過ぎる回転椅子に
爪先立ちで腰掛ける
窓から通路を見ているとやがて
それらしき人物がやってくる
表の看板を見て
待ち合わせの喫茶店であるかを
確認しているように見える
店名の装飾文字の描かれたガラス越しに
会釈をすると会釈し返してきて
男は店内に入ってくる
こちらで
と言うので
そちらの席に移る
お絞りが互いの前に一列分
敷き詰められていて
男が正しいお絞りを選択すると
その前にはホットドッグが置かれている
男は何も言わず黙々と
ホットドッグを口に運び続ける
延々と食べ続ける間
短冊切りのハムの切れ端が皿に落ち
指でつまもうとするができない
もういい、といった様子で指で押すと
ハムの切れ端が消える
男は不審そうにこちらを見ている
正しいお絞りがどれか分からないので
俄かに焦りを覚える
悟られないように
「朝食を食べ過ぎてしまって」
と嘘の満腹をほのめかす
男が溜息をつくので
ひどく機嫌をそこねたことが分かる
ふと男が持ってきたノートパソコンを見る
それを男が抜け目なく見ている
早く仕事の話に移って
ことをうやむやにしたいのだろう
と思われるのが悔しく
何か言わなければと心中で言葉を選んでいた
男はレンアイ感情と同じようなものだ、と言う
「恋愛感情?」
「子どもを設けてからでないと
何も分からないし始まらないのだよ。
子どもがいなければ決して始まりはしない」
「恋愛感情があって、次が子どもでは?」
「では聞くが、君は子どもを設けたのか」
「いいえ」
「ではやはり何にも分からんじゃないか」
「しかし順番として。。。」
「しかしも糞も、我々がここで食事を取るのも
両親が我々を設けたからだろう。
子どもを設けてもいない癖に君は
少し黙ったらどうだ」
何か虚をつかれてしまい、黙り込む
周囲の客が全員こちらを向いて
あれこれ喋りはじめる
「子ども以外に未来永劫何が残るのか」
「一生懸命考えたって、子ども以外のものは」
「恋愛とは子どもを設ける為の感情である」
「愛だの恋だの一生懸命叫んだところで」
「世界の中心で愛を叫ぶのも子ども」
「仕事をするのも子どもを作るためであり」
「またその子どもが子どもを作るためである」
「全て子どもを作るためだけの連環である」
「青春というのは子どもを作る前触れですね」
「ミジンコでさえ子どもを設けますからね」
「今をときめく子ども」
「せつな的に生きるのも子ども」
「瞬間、美しく咲く子ども」
「子どもを嫌いな子どもも悲しいほど子ども」
「あの子どもを好きなのも子ども」
「子どもの子どもが子どもを好きになる」
「清楚な子どもも卑猥な子どもも両方子ども」
「希望を持つのも絶望するのも子ども」
「仕事だけに一生捧ぐのも子ども」
「利口な子どもにアホ子ども」
「利口でもアホでも子どもならどっちでも」
「アホな親の子どもほど利口」
「アホが子ども作るほうがよいのだ」
「アホな子ども作るために利口もこどもを」
「子ども子ども全部子ども」
「結局子ども」
「子ども」
「子ども」
「子ども」
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