羊のマーチ
2003年12月11日羊が一匹
とつとつとつとつ
一年中歩いていたのをあなた
知っていましたか
あのころ
人々は羊について
確かに何かを祝っていた
歩き出した羊のこども
ひとりだけのマーチ
何を祝うのか
それは人々にとっても
皆目わからないことであった
それでも赤や白に
がやがやと街が賑わう中
歩き出した羊のこどもは
月日が経って
あの賑わいを人々が
すっかり忘れてしまってからも
とつとつと
ひとり
歩き続け
そうしてゆっくりと
おとなになっていった
羊は
ひとり静かに
歩き続けていた
ひとりだけのマーチ
たとえば
飛行機が飛んだ朝や
ひとがたくさん死んだ昼
どうか結婚して欲しい
そんな夜にも
歩き続けた羊のマーチ
やがてゆっくりおとなになって
いまやすっかり老いていた
とつとつとつとつ 目がかすむ
それでも羊は
いまでもひとり
とつとつとつとつ
歩いて歩いて歩き続けて
もうじき除夜の鐘がきこえて
羊は長い歩みを終える
誰に頼まれたわけでもなく
ただ
ひとり続けたその歩みを
羊が一匹
とつとつとつとつ
一年中歩いていたのをあなた
知っていましたか
羊は静かに
ひとり
歩き続けていたよ
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